空き家を相続したものの、「使い道がない」「売るべきか迷っている」と悩む人は少なくありません。 

空き家の増加が社会問題となる一方で、新たな活用方法が注目されています。

本記事では、空き家活用の基本から具体的な方法、事例、補助金制度、注意点までをまとめて解説します。

空き家活用とは?放置せずに活かすべき理由

実家を相続したものの使う予定がない、地方に古い家が残っている、売却するか貸すか迷っているといった悩みを抱える人が増えています。

近年、日本では空き家が増加しており、放置による老朽化や倒壊、防犯上のリスクが社会課題になっています。政府広報オンラインでも、空き家を放置すると倒壊や景観悪化、不法侵入などの悪影響が生じるおそれがあると説明されています。
 

一方で、空き家は見方を変えれば、地域に残された貴重な資源でもあります。住居として再利用するだけでなく、古民家カフェ、民泊、シェアスペース、地域交流拠点など、多様な形で活用する動きが広がっています。

参考:政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化」

空き家活用の意味

空き家活用とは、使われていない住宅や古民家を、売却・賃貸・リノベーション・店舗・宿泊施設などに再利用することです。

国土交通省の空き家対策特設サイトでも、空き家になった場合には「しまう(除却)」だけでなく、「活かす(活用)」という選択肢が示されています。具体的には、住宅のまま売却したり、用途を変えてカフェなどとして活用したりする方法があります。
 

空き家活用は、単なる不動産の有効活用にとどまりません。既存の建物を再利用することで、新築や解体に伴う資源消費を抑え、地域の景観や文化を残すことにもつながります。

参考:国土交通省「空き家対策 特設サイト」

空き家を放置するリスク

空き家を放置すると、さまざまなリスクが発生します。

代表的なリスクは、建物の老朽化です。人が住まなくなった住宅は換気や清掃が行き届かず、雨漏りやシロアリ被害、外壁の劣化などが進みやすくなります。

また、防犯面のリスクもあります。不法侵入や放火、ごみの不法投棄などが起こる可能性があり、近隣住民とのトラブルにつながる場合もあります。

さらに、倒壊の危険や景観悪化が進むと、自治体から指導を受ける可能性もあります。2023年の空家法改正により、適切な管理がされていない空き家は「管理不全空家」に指定され、固定資産税の優遇措置が解除されるリスクも高まりました。

参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」

空き家活用が注目される背景

空き家活用が注目されている背景には、人口減少や高齢化、相続問題があります。

親世代が住んでいた家を相続しても、子世代が別の地域に住んでいるため使い道がないケースは少なくありません。また、地方では人口減少により、借り手や買い手が見つかりにくい住宅も増えています。

一方で、地方移住や二拠点居住、古民家暮らしへの関心も高まっています。空き家をうまく活用すれば、住まいを必要とする人や地域で事業を始めたい人との接点をつくることができます。

日本で空き家が増えている背景と問題点

日本では空き家の増加が社会課題となっています。ここでは、空き家の現状や増加の背景、地域への影響、行政による対策について解説します。

日本では空き家はどれくらいある?

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点の全国の空き家数は約900万2千戸で、過去最多となっています。総住宅数に占める空き家率は13.8%となっており、日本では約7戸に1戸が空き家という状況です。

こうした背景から、空き家は個人の相続問題にとどまらず、地域全体で取り組むべき社会課題となっています。放置が進めば、防災・防犯・景観・地域コミュニティなど、多方面へ影響が広がります。

参考:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報) 」

空き家が増えている主な原因

空き家が増える原因は一つではありません。

主な要因としては、人口減少、高齢化、相続後の未利用、解体費用の負担、売却・賃貸の難しさなどがあります。

特に相続した実家の扱いは、多くの人にとって悩みやすい問題です。売りたいと思っても買い手が見つからない、貸したいと思っても修繕費がかかる、解体したいと思っても費用が高いといった理由で、そのまま放置されるケースがあります。

空き家が地域に与える影響

空き家は所有者だけの問題ではなく、地域全体にも影響します。

建物が老朽化すると、台風や地震の際に倒壊する危険があります。庭木や雑草が伸びることで害虫や害獣が発生し、近隣住民の生活環境に悪影響を与えることもあります。

また、空き家が増えると地域の景観が悪化し、まち全体の魅力低下につながります。防犯上の不安が高まれば、住民の安心感も損なわれます。

そのため、空き家は早めに管理・活用・売却・除却の方向性を決めることが重要です。

空家法改正と行政の対策

空き家問題への対策として、国や自治体も取り組みを強化しています。

空き家等対策の推進に関する特別措置法では、管理が不十分な空き家に対して自治体が助言・指導・勧告などを行える仕組みが整えられています。国土交通省も、空き家の活用や管理に関する情報を発信しています。

また、国土交通省は空き家対策モデル事業などを通じて、民間事業者や自治体による先進的な空き家活用の取り組みを支援しています。

参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」

参考:国土交通省「空き家対策モデル事業」

空き家活用の代表的なアイデア

空き家にはさまざまな活用方法があります。所有者の目的や建物の状態、地域のニーズに応じて最適な方法は異なります。ここでは、代表的な空き家活用のアイデアを紹介します。

売却・賃貸として活用する

最も基本的な空き家活用は、売却または賃貸です。

自分で使う予定がない場合でも、住まいを探している人に売却・賃貸できれば、空き家の放置を防げます。

地方では自治体が空き家バンクを運営していることもあり、所有者と利用希望者をつなぐ仕組みが整いつつあります。「LIFULL HOME’S 空き家バンク」は、全国の地方自治体が管理する空き家・空き地の情報をまとめたポータルサイトで参考になります 。

参考:LIFULL HOME’S 空き家バンク

リノベーションして住居や店舗にする

古い空き家でも、リノベーションによって新たな価値を生み出せる場合があります。

例えば、古民家カフェ、雑貨店、アトリエ、事務所、サロンなどです。古い建物ならではの雰囲気やストーリー性を活かせるため、新築にはない魅力を打ち出せます。

ただし、リノベーションには費用がかかります。建物の状態によっては、耐震補強や断熱改修、水回り設備の交換が必要になることもあります。事前に専門家へ相談し、費用対効果を確認することが大切です。

民泊・ゲストハウスとして活用する

観光地や移住希望者の多い地域では、空き家を民泊やゲストハウスとして活用する方法もあります。

古民家の雰囲気や地域の暮らしを体験できる宿泊施設は、観光客にとって魅力的な選択肢になります。

一方で、宿泊施設として運営する場合は、旅館業法や住宅宿泊事業法、消防法などの確認が必要です。単に建物を整えるだけでなく、許認可や運営体制も含めた準備が欠かせません。

シェアスペース・地域交流拠点にする

空き家は、地域の人が集まる場所として活用することもできます。

例えば、コワーキングスペース、イベントスペース、地域の集会所、マルシェ会場、ワークショップ会場などです。

在宅ワークや地方移住が広がる中で、地域に小さな仕事場や交流拠点があることは、住民や移住者にとって価値になります。

福祉・子育て・教育施設として活用する

地域課題の解決に向けて、空き家を福祉・子育て・教育施設として活用する方法もあります。

高齢者の居場所、子ども食堂、学習支援スペース、放課後の居場所など、地域に不足している機能を空き家で補うことができます。

このような活用は、大きな収益を目的とするよりも、地域の困りごとを解決する公共性の高い取り組みとして検討されます。

空き家活用の成功事例

空き家活用にはさまざまな成功事例があります。活用方法によっては、空き家の有効活用だけでなく、地域活性化や移住促進にもつながります。ここでは、代表的な事例を紹介します。 

古民家カフェ・工房として再生した事例

空き家活用の代表的な事例の一つが、古民家カフェや工房への再生です。

岡山県瀬戸内市では、移住交流促進協議会「とくらす」などが中心となり、築100年を超える古民家を改修し、カフェ、工房、美容院、交流施設などとして再生する取り組みが行われています。

空き家の再生が、移住者の受け入れや地域のにぎわい創出につながっており、地域資源として空き家を活用する好例となっています。 

参考:瀬戸内市移住交流促進協議会「空き家活用 事例集 」

移住者向け住宅として活用した事例

空き家バンクを通じて、移住希望者に空き家を紹介する自治体も増えています。

移住希望者にとっては比較的安価に住まいを確保でき、地域側にとっては人口流入や空き家解消につながります。

なお、自治体向けメディア「自治体ワークス」では、古民家再生、賃貸活用、民泊化など多様な先進モデルが紹介されており、所有者にとっても参考になります。 

参考:自治体ワークス「空き家活用の成功事例15選」

地域交流拠点・シェアオフィスとして活用した事例

国土交通省近畿地方整備局では、滋賀県米原市におけるサテライトオフィス化や、京都府南丹市における交流施設化などの事例を紹介しています。

空き家を仕事場や交流施設へ転換することで、移住促進、地域コミュニティ形成、関係人口創出につながっています。


参考:国土交通省近畿地方整備局「近畿管内における空き家活用事例」

空き家活用で使える補助金・支援制度

空き家の活用には一定の費用がかかることがありますが、自治体や国の支援制度を活用できる場合があります。ここでは、主な補助金や支援制度について紹介します。

自治体の空き家改修補助金

空き家活用を進める際には、自治体の補助金を確認することが重要です。

自治体によっては、空き家の改修費、家財処分費、解体費、移住者向け住宅改修費などを補助している場合があります。

補助金の有無や金額、対象条件は地域によって異なるため、まずは空き家が所在する自治体の窓口や公式サイトを確認しましょう。

空き家バンクの活用

空き家バンクは、空き家を売りたい・貸したい所有者と、住みたい・使いたい人をつなぐ制度です。

自治体が運営するもののほか、全国版の空き家バンクサイトもあります。LIFULL HOME’S 空き家バンクやアットホーム空き家バンクでは、全国の登録物件を探すことができます。

空き家を所有している人は、自治体に相談することで登録できる可能性があります。

参考:アットホーム 空き家バンク

国の空き家対策支援

国土交通省では、空き家対策を推進するための支援事業を行っています。

空き家対策モデル事業では、空き家に関する相談対応、新たなビジネスモデル、新たなライフスタイルに対応した空き家活用、AI・デジタル活用などが募集テーマとされています。

空き家活用は、個人だけでなく、自治体・民間事業者・地域団体が連携して進めることで、より大きな効果が期待できます。

参考:国土交通省「空き家対策モデル事業」

空き家活用を始める前の注意点

空き家の活用を成功させるには、事前準備や確認が重要です。建物の状態や法規制 、地域との相性などを踏まえたうえで、適切な活用方法を検討しましょう。ここでは、空き家活用を始める前の注意点を紹介します。

建物の状態を確認する

空き家を活用する前には、建物の状態確認が欠かせません。

特に確認したいのは、耐震性、雨漏り、シロアリ被害、外壁や屋根の劣化、水回り設備、電気配線などです。

見た目はきれいでも、内部の劣化が進んでいることもあります。リノベーションや店舗利用を考える場合は、建築士や工務店など専門家に調査してもらうと安心です。

用途変更や法規制を確認する

住宅を店舗や宿泊施設、福祉施設などに変える場合は、用途変更や法規制の確認が必要です。

建築基準法、消防法、旅館業法、都市計画法、用途地域など、活用方法によって確認すべき項目は異なります。

特に民泊や飲食店として使う場合は、許認可や設備基準を満たす必要があります。計画段階で自治体や専門家に相談しましょう。

収益化だけでなく地域との相性を見る

空き家活用では、収益化だけを優先すると失敗することがあります。

例えば、地域住民の理解を得ないまま民泊を始めると、騒音やごみ出しなどでトラブルになる可能性があります。

空き家は地域の中にある資産です。周辺住民の生活環境、地域ニーズ、交通アクセス、観光資源、商圏などを踏まえ、地域と相性の良い活用方法を選ぶことが大切です。

空き家活用に関してよくある質問(FAQ)

ここまで空き家活用の方法や事例、支援制度、注意点について解説してきました。最後に、空き家活用に関してよくある質問をQ&A形式で紹介します。

Q. 空き家活用にはどれくらい費用がかかる?

A. 空き家活用にかかる費用は建物の状態や活用方法によって大きく異なります。

住居として貸すだけなら最低限の修繕で済む場合もありますが、カフェや宿泊施設として使う場合は、内装工事、設備交換、耐震補強、消防設備などで大きな費用がかかることがあります。

まずは現地調査と見積もりを行い、補助金の利用可否も確認しましょう。

Q. 空き家バンクは誰でも使える?

A. 多くの空き家バンクは、空き家の所有者と利用希望者の双方が利用できます。

ただし、登録条件や利用条件は自治体ごとに異なります。物件の所在地、建物状態、所有者確認、移住条件などが設定されている場合もあるため、各自治体の案内を確認することが大切です。

Q. 古い家でも活用できる?

A. 古い家でも、建物の状態によっては十分に活用できます。

特に古民家は、現代の住宅にはない雰囲気やデザイン性が魅力になることがあります。カフェ、宿泊施設、アトリエ、地域交流拠点など、建物の特徴を活かした使い方が考えられます。

ただし、安全性の確認は必須です。耐震性や雨漏り、設備の老朽化などを確認したうえで、無理のない活用計画を立てましょう。

まとめ:空き家は地域資源として活用できる

空き家は、放置すれば老朽化や倒壊、防犯、景観悪化などのリスクになります。

しかし、早めに対策を考えれば、住居、店舗、宿泊施設、地域交流拠点など、さまざまな形で活用できます。

空き家活用は、所有者にとって資産を守る手段であると同時に、地域にとっては新しい人の流れや交流を生み出すきっかけにもなります。

また、既存の建物を活かすことは、資源の再利用や廃棄物削減にもつながります。新しく建てるだけでなく、今あるものを活かすという視点は、新築に伴うCO2排出や廃棄物の削減につながり、脱炭素(GX)やサステナブルなまちづくりの推進にも貢献します。

空き家を所有している場合は、まず建物の状態を確認し、自治体の制度や空き家バンク、補助金の情報を調べることから始めてみましょう。早めの一歩が、空き家を地域の負担ではなく、地域資源へ変えるきっかけになります。